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1.社会・治安情勢
2013年8月に成立したローハニ政権により,一昨年7月,イランとP5+1(米,英,仏,露,中及び独)との間でイランの核問題に関する最終合意がなされ,昨年1月に同合意が履行に移されました。他方,イラン国内の経済状況については,インフレ率や失業率もやや改善傾向にはあるものの,依然として高いレベルにあるなど厳しい状況にあります。
ISILの動向については,これまでイラン国内における同組織によるテロの発生は見られていないものの,同組織の関係者とされる人物が逮捕された等の報道が複数確認されております。
こうした状況下,治安面では,一部国境地域を除けばテロによる脅威は少ないものの,依然として邦人に対する強盗や窃盗事件の発生が見られるなど,イラン国内での行動に当たっては十分に注意が必要です。
また,本年5月19日には,当地において第12期大統領選挙の開催が予定されております。治安関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。
なお,外務省は今般,中堅・中小企業の安全対策の強化を重視した「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」(http://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/golgo13xgaimusho.html)を制作しておりますので参考としてください。
2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)概要
イランでは,犯罪件数等に関する統計が公表されていませんが,各種報道に照らしてみると慢性的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,刃物を使用したスマートフォン等携帯端末を狙った強盗等),窃盗(ひったくり,スリ等)等の事件が発生しております。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。
・ 1月9日,ケルマンシャー州警察の発表によると,同州刑務所内で警察官1人を殺害した犯人が処刑された。
・ 1月30日,フーゼスタン州警察の発表によると,過去数日間に同州アバダーン市内で粗暴行為を働いた26人が逮捕された。
・ 2月19日,テヘラン市内フェルドウスィー通りに所在する両替所内で強盗事件が発生し,金銭を強奪した犯人が逃走した。
・ 2月26日,ホルモズガーン州の治安当局が,同州ルーダン市で武器製造グループを摘発し,同グループ構成員5人が逮捕された。
薬物事犯については,昨年6月21日,イラン内務大臣が「イラン暦1394年中に約618トンの麻薬を押収,2,522回の摘発作戦により3,017の麻薬密輸グループを解体,220箇所以上の覚醒剤密造拠点を解体した。」と発表しました。また,同4月23日には,イラン法医局が,同1394年中にイラン全国で死亡した麻薬中毒者数は3,000人以上に上り前年比で0.6%増加したと発表するなど,薬物情勢に好転の兆しは認められず,麻薬密輸グループの摘発や麻薬類の押収に関する報道は後を絶ちません。
(2)邦人被害事案
第4四半期中,当館において1件の邦人被害を把握しております。
【事例:窃盗(空き巣)被害】
2月23日,テヘラン市内ジョルダン地区に所在する6階建アパートの1階から3階に所在するイラン人及び在留邦人宅が空き巣被害に遭いました。被害状況としては何れも,犯人が被害者の留守宅玄関から侵入し,金品や家財道具等を窃取し逃走したものです。何れの玄関も施錠されておりましたが,ドアの上部をバールでこじ開けられるなどして開扉・侵入されました。
3.テロ・爆発事件発生状況
(1)テヘラン市内
第4四半期中,テヘラン市内におけるテロ・爆弾事件発生の情報には接していません。
なお,1月19日,テヘラン市内のプラスコ・ショッピングセンタービルが火災の後倒壊する事案が発生しました(邦人被害はなし)。アラヴィ情報大臣は,事後に倒壊現場を訪れた際,本倒壊の原因がテロを始めとする何らかの破壊工作であるとの情報には接していないと述べています。
(2)南東部パキスタン国境付近(シスタン・バルチスタン州等)
同地域には,「ジェイシュ・アルアドル(「正義の軍隊」の意)」と呼ばれるスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる政府,治安関係者等に対するテロ,爆発事件が複数件発生しています。同地域においては最近,以下の報道が確認されております。
・ 1月6日,シスタン・バルチスタン州サルバズ郡ジャキグルにおいて,革命ガード隊員とパキスタンから越境を試みたテロ・グループとの間で戦闘が発生し,革命ガード隊員1人が死亡,3人が負傷した。本件に関し,ジェイシュ・アルアドルが犯行声明を発出した。
・ 2月6日,イラン南東部シスタン・バルチスタン州警察のホセイン・ラヒミ長官は,同州に所在するデルガン・ゼコルート(Delgan-Zehkoloot)道路付近において,パトロール中のイラン治安機関員1人が,武装グループから銃撃を受け殺害されたことを明らかにした。
(3)北西部イラク国境付近
同地域では,「PJAK(クルド自由生命党)」がクルド人独立民主共和国家の建設を目指し,イラン政府,軍及び治安関係者を標的とした武装襲撃を敢行するなどの動向が見られるほか,ISIL関連動向も見られます。最近も以下の報道が確認されております。
・ 昨年11月27日,アラヴィ情報大臣は,治安部隊が,アブ・アイシャ・アル・クルディ(Abu Aisha Al-Kurdi)を含む複数のISIL構成員を国境地域において殺害したことを明らかにした。同構成員らはイランへの侵入を試み,テヘランにおけるテロ行為を企図していたとされる。
・ 同12月7日,イラン内務省のホセイン・ゾルファガリ治安・法執行担当次官は,治安部隊が同国西部のイラクとの国境地域において,イラクから越境してきたISILと関連を有するテロリスト3人を殺害し,同人らで構成されたグループを解体したことを明らかにした。同グループは,イラン国内での破壊活動を企図していたとされる。
(4)その他の地域
・ 1月4日,イラン内務省のサーマーニ報道官は,南西部フーゼスタン州においてアフヴァーズの分離派を名乗るグループにより石油パイプライン2箇所を狙ったテロ攻撃があった旨を伝えた同日付AP通信の報道について,事実ではないと否定の上,同地域においてはいかなる脅威も発生していないと述べた。
・ 2月11日,アラヴィ情報大臣は,治安機関により,テヘランを始めとする国内各地においてイラン・イスラム革命記念日(注:2月10日)に係る行事を狙った自爆テロ攻撃等を計画していたタクフィーリ・グループ構成員の8人が逮捕されたことを明らかにした。
・ 3月27日,イラクのディヤーラー(Diyala)県を拠点とし,ISILと関係を有する武装組織が,インターネット上にペルシャ語でイランを脅迫する動画を投稿した。
なお,昨年12月24日,ジャアファリ革命ガード総司令官が,イラン国内及び国境地域においては安全が確保できていると述べたほか,2月12日にはホセイン・アシュタリ警察長官が,警察,軍,情報機関等の連携により,国境地域を始めとするイラン国内の治安は良好に保たれていると述べています。
4.誘拐・脅迫事件発生情報
(1)誘拐事件
第4四半期中,誘拐事件が発生したとの情報には接していません。
(2)脅迫事件
第4四半期中,上記3.(4)の事案を除いて,脅迫事件が発生したとの情報には接していません。
5.日本企業の安全に関わる諸問題
現時点,日本企業であることを理由とした脅威は特段認められないものの,上記治安情勢を考慮しますと,引き続き楽観視できない状況にありますので注意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページ等をご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。